ハイレゾオーディオ入門としてアンプやスピーカーを揃えた後、誰もがぶつかるのが「ケーブル沼」という迷宮です。
数千円から数十万円するものまであり、「本当にそんなに音が変わるの?」と身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。
偉そうなことは言えません。
私自身、ケーブルによる音の飛躍的な変化を細かく聞き分けることはできません。
それでも私がBELDEN(ベルデン)のツイストケーブルを使い続けているのは、「プロの現場でも使われる定評あるケーブルなら間違いない」という、揺るぎない信頼感があるからです。
実は、我が家のケーブルにはちょっとした物語があります。
Amazonでよく見るBELDEN 8470は白黒ですが、我が家で40年現役のこのケーブルは『青黒』。

ということは、ベルデン製に似せた国産の良質なツイストケーブルかもしれません。
あるいは、もしかして、BELDENのビンテージ産業用ワイヤーの系譜かもしれない……。
今回は、そんな謎めいたビンテージケーブルにバナナプラグを奢りつつ、ハイレゾ初心者が「ケーブル選びで迷わないための、最も堅実でタフな選択肢」として、この定番ツイストケーブルの魅力をお伝えします。
ベルデン製スピーカーケーブルの歴史ベルデン製(ツイストペア)スピーカーケーブルの歴史と裏話
BELDEN(ベルデン)といえば、現代でもプロのレコーディングスタジオや放送局、ライブ会場などで圧倒的なシェアを誇るアメリカの老舗電線メーカーです。その歴史は古く、1902年にシカゴで設立されて以来、通信や産業のインフラを支え続けてきました。
そんなプロ仕様のベルデンが、なぜ日本のホームオーディオ、それも40年近く前のオーディオ黄金期にこれほど普及したのでしょうか。そこには、当時の日本のオーディオ事情と、産業用ワイヤーが持つ「隠れた系譜」の物語があります。
レコーディングのプロが信頼した「スタジオ規格」
1980年代、日本のオーディオ界は空前の大ブームを迎えていました。その中で、日本ビクター(JVC)をはじめとする大手音響メーカーやプロの録音スタジオが、アメリカから輸入されたベルデンのケーブルを標準採用し始めます。
「スタジオで原音を録音するときに使われたケーブルを、そのまま自宅の再生システムにも使えば、最もピュアな音が聴けるはずだ」
そう考えたこだわりのオーディオショップや特約店(当時のビクターショップなど)が、プロ用のベルデンを店頭で「切り売り」し始めたことが、日本のマニアの間に浸透するきっかけとなりました。
ノイズを打ち消す「ツイストペア構造」の魔法
ベルデンのスピーカーケーブル(代表的な「8470」や、ウミヘビと呼ばれる「9497」など)の最大の特徴は、2本の電線がガッチリと互い違いに編み込まれた「ツイストペア構造」にあります。
実はこの構造、もともとはオーディオ用として開発されたものではなく、通信機器や産業用機械の内部で「激しい電気ノイズから信号を守るため」に生まれた産業規格でした。 この「ノイズに強く、信号をストレートに伝える」という産業用のタフな設計が、結果としてオーディオにおける「味付けのない、ストレートで芯のある音」に完璧にマッチしたのです。
我が家の「青黒」ケーブルが持つ、2つの可能性
現在、Amazonなどで手に入るベルデンの定番「8470」は「白と黒」の組み合わせが基本です。しかし、我が家で40年現役のケーブルは、鮮やかな「青と黒」。

この「青黒ツイスト」のルーツを紐解くと、当時の熱い時代背景が見えてきます。
- 可能性その1:BELDENのビンテージ産業・軍用(MIL)ワイヤー 当時のベルデンは、結線ミスを防ぐために産業用・軍用規格のツイスト線に「青×黒」「赤×黒」など豊富なカラーバリエーションを展開していました。プロオーディオに強かったショップが、本国アメリカから音質の優れた産業用ロットを独自に仕入れて販売していた可能性があります。
- 可能性その2:日本の老舗電線メーカーによる「良質な国産ツイスト」 1980年代当時、ベルデンのツイスト構造の噂を聞きつけた日本の優秀な電線メーカー(吉河電線や協和電線など)が、日本製の高品質な錫(すず)メッキ銅線を使って、プラスマイナスが分かりやすい「青黒」のツイストケーブルを製造し、電気街やオーディオショップの定番として競い合っていました。
どちらの系譜にせよ、40年前に「これなら間違いない」と太鼓判を押されて店頭に並び、四半世紀を遥かに超えて今なお現役で素晴らしい音を鳴らし続けているという事実。それこそが、この時代のツイストケーブルが持っている本物のクオリティの証なのです。
40年モノのケーブルにバナナプラグを取り付ける
40年。
ぴったり40年ではなく、約40年ということなのですが、さすがに40年前からバナナプラグを使っていたわけではありません。
両端にバナナプラグを接続したのは、スピーカーをヤマハのNS-BP200(BP)にしたときからです。
それまでは、両端の被覆を剥いで銅線を裸にし、アンプ側もスピーカー側もネジ式端子に絡みつけていました。
バナナプラグを導入した理由
お値打ちながら驚くほど高音質なハイレゾの音を聴かせてくれるヤマハのNS-BP200ですが、スピーカーの裏側を覗くと立派なバナナプラグ対応の金メッキ端子が備わっています。
「せっかくのハイレゾ環境だし、抜き差しが圧倒的に楽になるバナナプラグを試してみよう」
そう思い立って、長年愛用してきたこの青黒ケーブルの先端を加工することにしました。
40年目の真実:剥いた芯線はどうなっていたか?
ここで驚いたのが、久しぶりにケーブルの被覆をカッターで剥いて、中の芯線(銅線)と対面したときのことです。
普通、何十年も放置された銅線は、空気中の酸素や湿気で茶黒く「酸化」してボロボロになっていることが珍しくありません。特に、これまで端子に絡めるためにむき出しにしていた先端部分は、それなりにくたびれていました。
ところが、古い先端を少し切り落とし、新しく被覆を剥いて現れた内側の芯線は、驚くほどピカピカとした輝きを保っていたのです。
これこそが、プロの現場や産業用として信頼され続けるツイストケーブルのタフさの証明でした。被覆の密閉性が高く、中の銅線を40年近くもの間、静かに守り続けてくれていたわけです。
いざ、バナナプラグの取り付け
新しく露出させた瑞々しい芯線を軽くねじり、用意したバナナプラグ(今回用意したのは、アズキホーム 金メッキ バナナプラグです。) に差し込んで、ネジをしっかり締め込みます。

ツイストケーブルは適度な硬さと太さがあるため、プラグの中でしっかりと固定され、ガタつくこともありません。作業自体は非常にシンプルで、左右のプラスマイナス(青と黒)を間違えないように注意するだけで、あっという間に現代的なバナナプラグ仕様のケーブルへと生まれ変わりました。

ちなみに、今回使用したような金属製のバナナプラグは、万が一プラグ同士が接触するとショートしてしまう危険性があります。
安全に、そして安心して長く使うために私が行った「絶縁対策」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「自分で被覆を剥いてプラグを取り付けるのは、ちょっとハードルが高そう…」という方には、あらかじめ職人やメーカーの手によって、ハンダやネジ留めで美しくバナナプラグが装着された「加工済み製品」も販売されています。これなら、届いてすぐにアンプやスピーカーにカチッと挿すだけです。
切るには忍びない「5メートル」という長さ
プラグの取り付けが無事に完了し、改めてケーブルの長さを実測してみたところ、片チャンネル分で「5メートル」ありました。
左右合わせて10メートルです。
現在のコンパクトなデスクトップオーディオの配置からすると、正直なところ少し長すぎます。
余った分が机の裏側で束ねてあります。
オーディオのセオリーで言えば、「ケーブルは短いほうが良い」、あるいは「適切な長さにカットすべきだ」と言われるかもしれません。
しかし、私はこのケーブルを切断するつもりはありません。
40年近くもの間、さまざまなオーディオ機器の配置替えや、部屋の模様替えがありましたが、この「5メートル」という長さがあればこそだったからです。
少し不恰好かもしれませんが、余った分は机の下ですから、ほとんど見えません。
スピーカーケーブルを束ねると音質に影響が出るという意見もあるようですが、そこまで聞き分ける耳を持っていませんし、そもそもそういう影響をあまり受けないように「ツイスト」されているのが、このベルデン・ツイストケーブルの良いところだと思っています。
「大は小を兼ねる」ではありませんが、今後もし広い部屋にシステムを移すことがあっても、この長さがあればどんなレイアウトにも対応できそうです。
これからハイレゾオーディオを始めてみたいという方、そして「ケーブル選びで迷子になりたくない」という方には、このシンプルで力強いツイストケーブルを自信を持ってお勧めします。
まとめ:我が家のハイレゾシステム、ここに完成
約40年前にビクターショップで手に入れた「謎の青黒ツイストケーブル」に、現代のバナナプラグを奢る。そんな小さなDIYを経て、我が家のデスクトップオーディオ環境がついに理想の形で整いました。
オーディオの世界では「数万円の高級ケーブルで劇的に音が変わる」といったレビューをよく目にします。 しかし、私自身はそこまで繊細に音を聴き分ける耳は持っていません。
それでも、プロの現場で育まれたベルデンの系譜(あるいはそれに並ぶ良質な国産ツイスト)ならではの、「40年経っても劣化しないタフさ」と「ノイズに強い構造」への信頼感があるからこそ、余計な雑念を捨てて、純粋に最新のハイレゾ音源が持つ緻密な音世界へ没頭できています。
これからハイレゾオーディオを始めてみたいという方、そして「ケーブル選びで迷子になりたくない」という方には、このシンプルで力強いツイストケーブルとバナナプラグの組み合わせを、自信を持ってお勧めします。
今回ご紹介したスピーカーケーブルをはじめ、我が家のハイレゾ入門を支えてくれている「主役」たちの機材については、ぜひ以下のレビュー記事もあわせて参考にしてみてください。
我が家のハイレゾオーディオ入門・機材レビュー
【ハイレゾ音源を送り出す司令塔:Mac mini 2018】
膨大な音楽ライブラリやストリーミングのハイレゾ音源を管理し、クリアなデジタル信号をDACアンプへと正確に送り出してくれる、我が家のオーディオの頼れる司令塔です。
【高音質な音世界の入り口:DACデジタルアンプ】
パソコンからのデジタル信号をピュアな音へと変換し、今回のスピーカーケーブルへと送り出してくれる、システムの心臓部です。
【驚きのコストパフォーマンス:YAMAHA NS-BP200】
40年モノのケーブルとバナナプラグをがっちり受け止め、お値打ち価格からは想像もつかないほど豊かな響きを聴かせてくれるスピーカーです。
お気に入りの機材と、長年連れ添ってきた愛着あるケーブルが、現代のハイレゾ環境で一つに繋がる。
それ自体が、私にとって何よりのうれしいことなのです。
みなさんもぜひ、自分にとっての「間違いない定番」を見つけて、心地よい音楽ライフを楽しんでみてくださいね。






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